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2019-01-27

特別講座 2019.1.26(土)日本語の中のサンスクリット 髙橋健二先生


ご講師は髙橋健二先生。京大インド古典学専修の博士課程に在学中。もとは経済学部だったそうですが、「心」のご研究をされたく、インド古典学に転部されたそうです。(勇者ですね)

ご研究テーマは「南アジアにおける心」。『マハーバーラタ』にみられる議論の分析を通し、当時あったとされる「アディヤートマ哲学」の内容を掘り起こされているそうです。研究のご発展によってインド哲学史が塗り替わっていくのが夢なのだとか。そしてその為に、この春から、イタリアの「ナポリ東洋大学」でご研究をされます。

そんなユニークな髙橋先生のご講義は、刺激あふれる内容でした。
特に面白かったところをいくつかご紹介します。

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①日本語の「蜜」はサンスクットの<madhu>→トカラ語の<mit>→古代中国語の<mjit>と、いくつかの文化圏を経てきた言葉。ちなみにロシアには「蜂蜜を食べる奴」(medvedev)という名字があるがこれは熊のことである。「蜂蜜を<medv>食べる奴<edev>」という隠語的な表現をするのは、「直接的に発語すると出くわしてしまう」という民俗的な信仰による。出くわさないないようにするための呪術的な語なのである。
(検索するとこれに関するネット記事がいくつも出てきます。ロシアにも以前には、といってもいつ頃のことか不明なようですが、日本語の「熊」に当たる直接的な名詞があったようです)

②サンスクリットの子音の分類表(破裂音)は、「か・ちゃ・反舌音のタ・タ・パ」となっている。
(「子音」は「や・ら・わ」も含むので「か・ちゃ・反舌音のタ・タ・パ」の分類を包括すると子音(破裂音)となります)

この発音順について、喉の奥での発音から口の前での発音へと順に変化させるようになっていく。(やってみてください)このように、覚える者がきっちり発音できるように工夫されているのは、真言や陀羅尼を流布させることと関係している。(どのような地域に伝播したとしても、正確に発音できるように)

③日本では平安時代に天台宗を中心に「悉曇学」(サンスクリット音声学)が確立された。上の②に書いたような、サンスクリットの発音表に日本語の発音を対応させた日本語の文字表が作られ、業界で使用されていた。日本語の「アイウエオ表記」である。江戸期にはかなり流通していたが、明治になって完全に一般化されていった。

④しかし、サンスクリットと日本語の発音を対比させていくと、
古代日本語の「さ」行は「ちゃ」行に対応しており、「は」行は、「パ」行に対応している。このことから、今の我々が行っている「サ・シ・ス・セ・ソ」の発音は古代には「チャ・チ・チュ・チェ・チョ」に近く、「ハ・ヒ・フ・ヘ・ホ」の発音は「パ・ピ・プ・ペ・ポ」又は「ファ・フィ・フゥ・フェ・フォ」に近かっただろうと思われる、京大のインド古典学の入試問題になりそうな感じがするが、しかし日本語の発音の歴史は言語学をやる人なら誰でも知っていることである。だから実際に問題に採用されることはないだろう。

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たいへん面白く刺激的な時間でした。
髙橋先生、またご帰国の折にはぜひよろしくお願い致します。
受講生の皆様も、吹雪の中お越し下さりありがとうございました。

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