特別講座 2019.9.21(土)「名の力と真言-その源流を求めて」
当日は、まず川村先生から以下の順にお話をいただきました。
ヴェーダ祭式について→祭文の分類→古代インドで考えられた言葉のもつ霊力→詩人/祭官の言語観・文法学者の言語観・語源学者の言語観の違い(そもそも語源学者とはどのような人たちか)→インドで考えられた名のもつ呪力とは?→ギリシャ哲学と日本文化との比較→祭文から真言へ
そして川村先生から3つの問いかけを聴講者の皆様にいただきました。
一、真言では各語の構造(成り立ち)を理解した上での発声の重要性という思想は生きているか。
二、各語の語源的意味を理解した上での発声の重要性という思想は生きているか。
※一、二について。 古代インドでは、特定の時代に祭文における神名の語源や文法的構造など一つ一つの語を細かく解析して理解した上で唱えるという文化があった。そのようにしなければ祈願が成就しないと考えられたが、 仏教でマントラを唱える際にもそのように考えられたのか?という問いかけです。
三、神仏の名を唱えることでその神仏を思いのままに操るという発想はあるか。
会場の空気ははじめからギュッとした集中力がありましたが、ここから、研究者の方や真言宗の僧侶様、一般聴講者交えて真剣で活発な質疑応答や見解の交換、交流がありました。 あっという間に終了の時間となりましたが、最後に仏教サロン加藤から「今後、ぜひ神社界の方や、西洋哲学の研究者にもお入りいただいて、言葉について、名のもつ力について考える会を持ってみたいです」とご挨拶させていただきました。川村先生、ご聴講くださった皆様に心からのお礼を申し上げます。
※以下は講師の川村先生による御案内文です。
【要旨】まず、 古代インドにおけるヴェーダ祭式儀礼とそこで使用される祭文(マントラ)の基本事項を確認する。次に、往時の祭式学者、文法学者、語源学者らの言語観を概観し、注目すべき諸点を洗い出す。それらを踏まえ、真言の起源と構造について考えてみたい。「名前がもつ呪力」を鍵とし、本邦における言霊思想や古代ギリシアなど他の文化圏に見られる言語観とも比較しながら、真言のさらなる理解に向けて新たな知見の提供を目指す。
【具体的内容】 1. ヴェーダ祭式儀礼と祭文(マントラ)を概観する。 2. 祭式学者、文法学者、語源学者らの言語観を概観する。 3.真言の起源と構造を考える。
【講師】 川村悠人(かわむら ゆうと)先生 広島大学大学院文学研究科 応用哲学・古典学講座准教授 サンスクリット文法学、語源学、詩学をご専門とされています。