2019.5.11(土)戒律復興運動報告会 酒部浩明師・工藤顕任師
2月23日に鎌倉の極楽寺で行われた、一般の方向けの「授戒式」の報告会を行いました。
この授戒式は興正菩薩叡尊上人や高弟の忍性菩薩(極楽寺開山)のご偉業を仰ぎ、現代に復興させようという有志の僧侶らが実施したものです。ご代表の西大寺・酒部浩明師と般若寺・工藤顕任師にお越しいただきました。
当日は「八斎戒」をお授けになったそうですが、これは叡尊上人が民衆に青空授戒でお授けされていたものと同じ戒です。叡尊上人は、日常的に戒を護れない方々に対し、特定の日(1ヶ月に6日間)だけ護ればよいとしてこの戒をお授けされたとのこと。内容は不殺生、不偸盗(ふちゅうとう・盗まない)不邪淫・不妄語・不飲酒(ふおんじゅ)の五戒に「高くゆったりした寝台に寝ない」「歌舞を見聞きしたり化粧をしない」「午後以降は食を取らない」を加えた八つです。「高くゆったりした寝台に寝ない」の戒について、お話くださった酒部師は「直に土の上に寝て暮らすような、貧しく生きるのに困窮する方々に心を向ける」との解釈をくださいました。そして現代における受戒の意義として、「戒は決められた項目を単純に護る、護らないという話ではなく、また、僧侶を含めた破戒の人をことさらに責める必要もない」「戒を心の底に持つならば、それが言うならば制限速度となる。たとえば制限速度60㌔の道を120㌔で走ることは控えようとするだろう」「そのようにして善に向かわせることが受戒の効用で、真言律宗という宗派だからこそ伝えていきたいと思い、行動を起こした」というお話をいただきました。
今後も機会がありましたら、ぜひその後の展開などをお聞きしていきたく思っております。
※なお戒は、「持戒 じかい」(śīla-dhara)という言葉があるように、仏教では「持(たも)つ」と考えます。この報告会では、戒について学んだことのある参加者の方が少なかったこともあり、酒部先生はお話の中で、一般的に言われている「戒を護る」という言葉をお使いになっていました。そして最後に「本来は、戒を『持つ』と言います」とご教示くださいました。「保つ」でなく「持つ」であるというお話もくださいました。以上のことを補足いたします。
2019年5月11日(土) 18:00~20:00
京都コンシェルジュサロン(JR京都駅より徒歩6分)
ご登壇 酒部浩明師(西大寺僧侶)
工藤顕任師(般若寺 副住職)
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当サロンがこの運動を支持している理由です。
1 特定の宗派が檀信徒を対象に行っている授戒式ではなく、誰でも受けることができる。
2 授けるのは戒のみで、同時に戒名を授けることはなさらない。法に付随するものを省き、法そのものを重視するご姿勢である。
3 上記2の特性から、菩提寺をもっている方でもお寺に遠慮せずに受戒することができる。
4 上記1~3については、類似の授戒式を行っている寺院もある。しかしこの運動において特記すべきことは、超宗派の有志者によるものであるということだ。全員が自己の意思で運動に参加し、無償(持ち出し)の出仕を行っている。出仕僧お一人お一人の動機は純粋な菩提心であり、このことが受戒者に与える善い影響は計り知れない。
5 将来的には出張方式での授戒式も検討しておられるなど、積極的に仏法興隆の機会を創出しようというご姿勢である。