空海の人間観-『十住心論』の「帰敬頌」を読み解く 講師:竹村牧男氏
空海の主著『秘密曼荼羅十住心論』の冒頭に、やや詳しい「帰敬頌」(論を作成するにあたって、諸仏に捧げる詩)が置かれている。その中には、「是の如くの自他の四法身は、法然として輪円せる我が三密なり」等とある。いったい、自他の各身がすべて自己の三密にあるとは、どのようなことを述べたものなのであろうか。ここには、空海の人間観・世界観の核心があるように思われる。そこで、この「帰敬頌」の内容を、空海の他の著作、『即身成仏義』等をも参考にしながら解読してみたい。